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長い階段の先にある未来。 〜北鎌倉にある大好きな古民家の話〜

by Yuka Sato

5時15分、夕暮れ時の北鎌倉駅。秋風が吹いていた。
9月になった途端、急に秋めいた空気を感じるようになった。

もう何度この駅を訪れただろう。何度助けられたんだろう。

大人になって初めてこの駅に降り立ったあの時、春風が私の生きている瞬間を証明してくれた。誰よりも繊細な心理状態だったと思う。あの時ほど、心が動いた瞬間はない。

もう二度と味わえないし、味わえなくて良い感覚なのだと思う。

でもこの場所を訪れるたび、あの時のことを少しだけ思い出す。

北鎌倉に来ると"ミライエ"という古民家にいくために、長い階段を登ることになる。

ミライエには先輩も上司もいないし、家族・親戚がいるわけでも、先生や教祖がいるわけでもない。
そこに集まっているのは、さまざまなバックグラウンドを持つ友達・仲間。ここに住んでいる人たちもいるので、シェアハウス兼イベントスペースといったところだ。普段ここで暮らしている人たちは、この古民家の暮らしをたっぷりと楽しんでいる。とても羨ましい。

ミライエは私にとっていわゆる、サードプレイス的な存在。
サードプレイスとは人によって様々なものが該当するのだけれど、例えば趣味のコミュニティ、スポーツジムや習い事の場、地元のお祭りで結びついているコミュニティなど「自分らしく居られる心地よい場所」のことなのである。

【自然や自由を感じながら、"未来"のことを考えられる創造的な家】なんて説明をしてみても、なかなかに胡散臭いかもしれないのだけれど、ミライエという場所を端的に表すなんて無理な話だ。それくらいこの場所には多様な役割がある。訪れる人それぞれにとって、さまざまな顔を見せる家なんだと思う。

ちなみに東京にも同じようなコンセプトの家があって、この2つの家はワークルというコミュニティ活動(ホームページには"仕事版サークル活動"とある)の拠点として存在している。

普段このコミュニティでやっていることとしては、キャリア・仕事を考えるイベント、読書会、対話、飲み会、ライティングワークショップとか他にもたくさんある。把握しきれていないのだけれど、だいたい私と同世代の人を中心に集まっていて、一緒に何かしら今後のキャリアにつながるような話をしたり、考えたり、創り上げたりすることができる。

今回はこのミライエにとって、節目のイベントに参加するために訪れた。
同じ北鎌倉内だけれど移転をするとのことだ。最後になるだろうから、ついでに泊まらせてもらってライターの仕事を片付けたりもした。

この家で朝目覚めると、澄んだ空気が身体にすーっと入ってきて本当に気持ちが良い。

そして、この家やワークルというコミュニティで学び得ているものは、少しずつ少しずつ私の人生やキャリアの一部に溶け込んでいく感覚がある。

「意識高い系」とか言われて変に肩身狭くなりがちな"ガクセイダンタイ"(そんなの気にしなくていいんだけどね、本来は)をやっていたあの頃の感覚といろんな点で重なる部分もあるけれど、それよりももっと自然な感じ。この場所やここに集まる人たちの、優しくて温かい包み込んでくれるような空気がそう思わせてくれるのかもしれない。

新しい拠点も古民家だそうで、イベントでその写真を見せてもらうと、ミライエと繋がっているんじゃないかと思うほど雰囲気が似た家だった。今までもそうだったと思うけれど、"古"や"CO(共に、共同、共通の意)"を大切にする場所になると聞いて「またきっといい場所になるんだろうな」と思った。

ほんの少しだけど、ミライエが確かにこの場所に存在した記憶について残してみた。

もちろん私には昔からの友達や家族、仕事関係の人など、大切な関係性が既存する中で、なぜまた新しく人間関係を築き始めているのかなと、ふと考えてもみた。
単純にいうと好奇心なんだけれど、もう一つあげるとすれば、私自身をもっと「空気感」に近づけたいためだった。

透明な空気感として、こちら側とあちら側(右とか左とか言っているわけではありませんよ)、つまり今まで交わることがなかったような異なる世界をつなげてみて、お互いに新しい世界を覗いてもらえたらそれは一つ、面白いことなんじゃないかなと思うんだ。

それで最終的には、みんなが認め合える世界になったらいいなと思っている。

まあそんな壮大な夢は置いておくとしても、"新しい空気感をつくれる人になること"自体がライターとしての私の価値になっていくのではないかと思う側面もあって、結局は自分のために他ならない。

現代人は長い長いキャリアや人生という階段を上っている。
息切れもするだろうし、多かれ少なかれ誰もが将来に対する不安を持ちながら日々戦っている。今の働き方への疑問とか、なかなか言えない言葉や伝えられない感情が、浮かんでは消えていくこともある。
そんな時にふと寄り添ってくれる家があったら、それはそれで新たな"いえ"や"かぞく"の概念なんじゃないだろうか。そんなことを考えていた2日間だった。

▼気になる方はこちらからどうぞ。
ワークル : http://goinggoinggoing-an.wixsite.com/workle
日本の未来が生まれる家 ミライエ : https://www.miraie.space/


Yuka Sato
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